金守製油さんの油




8月のはじめ、金守製油さんを訪ねました。






金守製油さんは玉締め圧搾法で食用油を作っておられる熊本の油屋さんです。

キセツノネイロでは、ドーナツを揚げる油に2種類の油を使用していて、そのうちの一つが金守製油さんのものです。

金守製油さんの油を使う前、わずかに感じていていた酸化の臭い。
揚げ油は高温で使用するんだから、酸化が早いのはしかたのないことなんですけど
その酸化臭を無くしてくれたのが金守製油さんの油でした。

そして臭いがなくなるだけでなくて、
菜種が本来持っている抗酸化成分が失われていない金守さんの油は他の油より酸化しにくい為、油を捨てることなく継ぎ足しでドーナツを揚げられるようになったのです。

いやはや
これ、普通考えられないことだと思うんですけど、
なぜ、そんなことができるのか。

まずは玉締め圧搾法によるもの。
そして搾ったあとの油の処理の仕方にあると私は思います。

玉締め圧搾法は、油圧で力を加えて石臼の重さで絞り出す方法。
菜種を焙煎、粉砕、蒸して、搾る。
とてもシンプルな工程です。








(一度に60キロを焙煎。菜種は熊本産。国産の菜種は色が黒いんだそうです)





そして粉砕









(蒸す。蒸すと油が搾りやすくなる。)




(圧搾。40分ほどかけてゆっくり搾る)


そして搾った油は、大きな樽に集められます。
その樽の中で3日間置いて、不純物を取り除きます。
そして今度は、地中に埋まっているさらにさらに大きなカメに入れて置きます。期間は3ヶ月。
この3ヶ月の間に目に見えない不純物も取り除くことができるそうで自然にまかせた製法です。





こうやって生成された油はちょっとクセがあります。
菜種そのまま。
菜の花と同じ匂い。
色も少し緑がかった黄色です。

だけど、この油がとにかくすごい。


そしてこの油を作る金守さん。
会ってみたくて、その場所を訪れてみたくて、いざ熊本へ。
家族と一緒に行ってきました。


行った感想は、
行ってよかった。
それに尽きます。


焙煎機、粉砕機、蒸し機、油圧ポンプ、そして大正7年に据えられたという圧搾機。






これらがガチャガチャと音を鳴らしてるその場所で、お二人が淡々と作業をされている。
クーラーがないので、汗だく。

だけど、とてもその姿が美しいと感じたのです。

ラクをしようと思えばいくらでもできる時代。
(今のところ)買う基準が製法よりも価格や種類で決めることの方が圧倒的に多い今の世の中。

その中で、明治の創業からずっと受け継いできたことをやるべきこととしてをやっておられる姿が、とても美しくてかっこよかったのです。


その空間に触れられただけで、もう、たまらん感じ。





近年、圧搾法の油屋さんはどんどん減少。
鉄工所も、焙煎機や粉砕機はまだ作ってもらえるけど、圧搾機を作れる鉄工所はもうないとのことで、廃業された油屋さんから部分を分けてもらったりご自身でメンテナンスを行ったりされているそうです。







無くならないで欲しい。





そして、
搾りカスは、油カスとして肥料へとなり、圧搾法の無駄の無さにも驚きました。


(搾りカスも美しい)





持ちかえったごま油もおいしかったー!

料理する度に、あの場所、2人を思い出す(笑)
思い出すと、なんか心がふわんとあたたかくなるんですよね。
作ってる人を知っているからでしょうかね?





金守製油さんの油は安くはないです。ないんですけどその分、菜種本来の抗酸化物質、ビタミン、ミネラルが豊富に含まれ身体に嬉しい油です。









今週からneiroドーナツ/キセツノネイロでも菜種油とごま油の販売を始めました。ぜひ試して欲しいです。






そしてキセツノネイロで使っているもう一つの油、坂本製油さん。実は同じ熊本の油屋さん。今回はコロナの影響で現在見学を中止されていて訪れることができなかったけど、また機会を作ってぜひ訪れてみたい。